日本人が知らないイギリス英語と階級制度の話

ロンドンブリッジ

イギリスには階級社会の伝統があります。

日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、社会の階層構造が今も根強く残っています。

映画『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』では、イギリスの階級制度をテーマにした場面がいくつも登場します。

あるシーンでは、出身階級が異なるブリジット・ジョーンズと恋人のマーク・ダーシーが休暇でスキーに出かけます。

そこで、ブリジットが妊娠したと思われる(実は誤解)場面があり、二人は生まれてくる子どもの教育や子育ての方針について意見が対立します。こうして互いの価値観の違いが浮き彫りになります。

優秀な弁護士であるマークは「子どもは全寮制の優秀な学校に入れて、寮生活をさせるべきだ」と考えています。

一方、ブリジットは「子どもがある程度大きくなるまでは、家族と一緒に過ごすことが大切だ」と主張します。この価値観の違いは、イギリスの階級社会に根付く考え方の違いを象徴しています。

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「生まれ」によって話し方が違う?

イギリスには、主に3つの階級(上流・中産・労働者階級)があり、所属する階級によって住む場所はもちろん、教育、仕事、さらには日常のふるまいや物の考え方にまで違いが表れます。

たとえば、いわゆる上流階級(Upper Class)の人々は、イートン校やケンブリッジ大学といった伝統的な名門校に進学し、銀行業や金融業、あるいは国政に関わるキャリアに進む傾向があります。

一般的な企業や公務員として働く人々は中産階級(Middle Class)、そして現場の作業職や職人、サービス業などに従事する人々は労働者階級(Working Class)に分類されることが多く、家庭環境や育ちによって進む進路がある程度決まってしまう面があります。

こうした違いは、仕事だけでなく話し方にも影響します。イギリスでは、英語の発音やイントネーションから、話し手の出身や社会階級がおおよそ分かると言われています。

文章だけでは伝わりにくい部分もあるため、出身階級が異なる3人の有名人のインタビュー動画をYouTubeから紹介します。話し方の違いをぜひ聞き比べてみてください。

階級による違い
階級 教育 主な職業
Upper Class
上流階級
伝統的な名門大学(オックスフォード、ケンブリッジなど)を卒業 世襲制の資産家が多く、地主や貴族などが中心
Middle Class
中産階級
大学へ進学するのが一般的 ホワイトカラー職(銀行、公務員、企業勤務など)
Working Class
労働者階級
大学進学は比較的少ない ブルーカラー職(肉体労働や職人など)。サッカー選手やミュージシャンなどもこの階層の出身が多いとされる

正確には、Lower Middle Class(下位中産階級)や Upper Middle Class(上位中産階級)など、さらに細かい分類もありますが、ここでは理解しやすくするために、大きく3つの階級に簡略化しています。

なお、近年では教育の普及や社会の流動性の高まりにより、階級の境界は以前ほど明確ではなくなってきているとも言われています。ただし、出身家庭や地域によって進学率や職業選択に一定の傾向が見られるのも事実です。

発音と階級制度

まずは、以下のYouTube動画で、異なる階級出身の有名人たちのインタビューを聞いてみてください。

同じ英語でも、話し方やアクセントに違いがあるのがはっきりと分かります。服装や髪型といった見た目の印象にも注目してみると、より興味深いかもしれません。

それでは、まずは労働者階級出身の人物から見ていきましょう。

労働者階級

デビット・ベッカム(イギリス出身の有名サッカー選手)

デヴィッド・ベッカムは、ロンドン東部のレイトンストーン出身で、労働者階級が多く暮らす地域です。父親はガス配管工、母親は美容師の家庭で育ちました。

幼い頃からサッカーに熱中し、学校の勉強よりもスポーツに強い関心を持っていた点も、典型的な労働者階級の家庭背景と一致しています。

また、彼の話し方には、ロンドン下町特有の「コックニー(Cockney)」訛りが見られるのが特徴です。

ノエル・ギャラガー(イギリスのバンド「OASIS」のリーダー)

インタビューの中には、やや強い表現やスラングが含まれる場合があります。あらかじめご了承ください。

ノエル・ギャラガーはイングランド北部のマンチェスター出身で、労働者階級の家庭で育ちました。父親は建設業に従事し、家計は決して裕福とは言えませんでした。

幼い頃から音楽に強い関心を持ち、学校教育よりも独学でギターを覚えることに夢中だったそうです。

彼の話し方は、マンチェスター特有の訛り(マンチェスター・アクセント)で知られ、率直で力強い口調が特徴です。

「労働者階級から成功するには、サッカー選手かミュージシャンになるしかない」というジョークが示すように、イギリス社会には今もなお階級による格差が根強く残っています。

OASISの代表曲「Cigarettes & Alcohol(シガレッツ・アンド・アルコール)」は、まさに労働者階級の生活や価値観を映し出し、階級社会の一面を感じさせる作品です。

中産階級

ヒュー・グラント(イギリス出身の俳優)

ヒュー・グラントは中産階級の家庭に生まれ育った俳優です。父親は出版社の役職に就いており、教育や文化に恵まれた環境で育ちました。

彼は名門オックスフォード大学を卒業した秀才で、洗練された話し方が特徴です。話す英語はBBCのニュースで聞かれる「クイーンズ・イングリッシュ(標準英語)」に近く、聞き取りやすいのが特徴です。

BBCを聞き慣れている方なら大体聞き取れる話し方で、適度に軽快な皮肉や冗談を交えるのも彼の魅力の一つです。

エディ・レッドメイン(イギリス出身の俳優)

エディ・レッドメインは裕福な中産階級の家庭に育ち、ケンブリッジ大学を卒業しています。父親は保険会社の経営者で、教育や文化に恵まれた環境で育ちました。

彼の英語は、標準的なイギリス英語に近く、とても聞き取りやすいのが特徴です。

ヒュー・グラントやエディ・レッドメインのように、裕福で高い教育を受けた人は、イギリスでは「上位中産階級」(Upper Middle Class)と見なされるのが一般的です。

このグループは社会的に成功しており、「新しいエリート」と呼ばれることもあります。ただし、代々続く貴族や地主のような伝統的な上流階級とは、家柄や背景の点で区別されます。

本記事では、わかりやすさを重視して、彼らを中産階級に位置づけています。

上流階級

チャールズ国王

チャールズ国王は、イギリスの伝統的な上流階級を象徴する人物であり、王室の一員として育ちました。

スコットランドのゴードンストウン校で学んだ後、ケンブリッジ大学に進んでいます。これはイギリスの上流階級に多い教育ルートの一例といえます。

彼の話す英語は、上流階級で一般的な「RP(Received Pronunciation)」と呼ばれる発音であり、「キングズ・イングリッシュ」としても知られる、格式高いアクセントの典型とされています。

発音が語るイギリスの階級社会

どうでしょうか?それぞれの英語のニュアンスや出身階級による違いが伝わったと思います。イギリス英語は一口に「イングリッシュ」と言っても、地域や話者の社会階級によって非常に多様であることが分かります。

ただし、イギリスでは「どのような発音で英語を話すか」が重要視されるため、階級と発音の関係は非常に繊細な問題となっています。

例えば、政治家として首相にまで上り詰めたマーガレット・サッチャーは中産階級の出身でしたが、自身の発音にコンプレックスを持ち、発音矯正のコーチをつけていたという有名なエピソードがあります。

イギリス人にとって、発音から出自を判断されることはデリケートな話題であると言えるでしょう。

まとめ

英語と言っても国によって違いがあります。特にイギリスでは、クイーンズイングリッシュ(標準英語)だけでなく、コックニー訛りやアイリッシュなまりなど、さまざまな英語があります。

そして、その背景にはイギリス独自の階級制度という社会構造が深く関わっています。この制度には長い歴史があります。

イギリスに興味を持ったら、英語を勉強するだけでなく、その国の歴史や制度についても学ぶことで、より深い理解が得られるでしょう。

最後に

私が2001年の夏にイギリスを訪れたときのことです。リバプールでホテルにチェックインした後、街を歩いていると、「英語が、全然聞き取れない…」と何度も戸惑いました。

こうした経験は一度だけではありません。その後、ウェールズを訪れた時も同じように感じました。さらに、2005年にエジンバラを訪れたときも同じでした。

「英語?全然わからない…」という経験を何度も繰り返すうちに、イギリス英語の多様性に興味を持つようになりました。

この記事では、主に「階級」をテーマに、その一端をご紹介しました。この記事が、英語という言語に対してより深い関心を持つきっかけになれば幸いです。

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