
AIの発展によって、私たちが英語を学ぶ方法は劇的に変わりつつあります。
ChatGPTやGeminiにアクセスし、「英語の練習相手になって」と頼めば、いまでは文字ベースとはいえ、無料で英語のアウトプット練習ができます。
スピーキング力を改善するためのAI英会話アプリも次々と登場しています。こうしたツールを使うことで、「もう、ネイティブにお金を払って話さなくてもいいのでは?」と思ってしまうかもしれません。
ですが一つだけ、重要なことがあります。それは、そもそも英語はコミュニケーション、つまり「人との会話」であるということです。
この記事では、「AI時代だからこそ、人と話す英会話の練習がなぜ大切なのか?」という視点を紹介します。AIをツールとして活用しながら、英語を実践的に身につけるためのヒントになれば幸いです。
AIはすごい。でも、完璧ではない
AIは便利です。AIを使いこなせるようになることは、今後私たちの人生や仕事、そして生活のあらゆる面でますます重要になるでしょう。ですが、AIにはできることと、できないことがあります。
たとえば、AIは「共感」することができません。精度の高い翻訳は瞬時に行ってくれますが、会話の裏にある「感情」や話者の「意図」を理解することは得意ではありません。
たとえば、日本語の「すみません」という言葉。これは単なる謝罪ではなく、感謝や依頼、遠慮など、状況によって多様な意味を持ちます。
英語も同じです。TPOや声のトーン、文化的背景によってニュアンスは大きく変わります。AIは言葉の表層を処理できますが、そうした文脈や感情の機微までは理解できません。
また、私たちの会話は、人と人との共感のフィードバックによって成り立っています。
相手の言葉を理解するだけでなく、表情や間(ま)、声のトーンなど「言語化されていない空気」からも感情を読み取っています。そして、その感情に合わせて言葉を選んだり、伝え方を変えたりしているのです。
AIとの英会話練習は確かに「それらしい」反応を示してくれますが、それは人との会話とは異なります。AIは入力された言葉に対して、最適な出力を返すだけ。いわば、キーボードで「a」を押せば画面に「a」が出るようなものです。
一方、人との会話では、同じ「a」を押しても相手が「A」と受け取ることがあります。そこには解釈の違い、感情の揺れ、予測不可能なリアクションが存在します。だからこそ、人との会話が大切なのです。
予測不可能な「リアル」な会話に対応する柔軟性の獲得
人とのコミュニケーション、特にバックグラウンドが異なる人との会話は常に予測不可能です。
事前にシミュレーションしても、相手には考え方や感情があります。こちらの一言で、相手の表情や態度が変わることもあります。
AIとの会話は、ある意味「予定調和の世界」です。用意されたスクリプトの中で練習するのに最適ですが、現実の会話ではそうはいきません。
人間同士の会話では、瞬発的な思考や柔軟な対応が求められます。たとえば、
・商談中に、相手が話の流れと関係ない質問をしてくる。
→ 必要なのは、瞬時の判断力と表現力。
・ディベートで正しい主張をしても、相手が納得しない。
→ 必要なのは、論理よりも相手の感情をほぐすコミュニケーション力。
こうした力は、人とのリアルなやり取りの中でしか磨かれません。それは、AIとの練習や教科書では身につかないスキルです。
学習者の個性と心理を考慮した人間的なパーソナライズ
AIの強みは分析力です。大量のデータから、必要な情報を分析し、提供してくれる。その力に関して、もはや人はAIにかないません。
ですが、AIの強みはあくまで「データ解析」であって、それが必ずしも英語学習に生かされるとは限りません。
AIは過去のデータから傾向や対策を打ち出します。それは「客観的」かもしれません。ですが、ある意味でそれは、生年月日を入力すれば閲覧できる無料の占いのようなものです。
「◯◯◯◯年◯◯月◯◯日生まれの人の運勢傾向はこうです」
といった形で過去のデータから傾向を導くことはできますが、それはあくまで一般論。目の前のあなたにぴったり合うとは限らないのです。
そしてAIは、長年英語を学ぶ生徒と向き合ってきた熟練の英語教師のように、
「この生徒はこうした性格で、あの部分を苦手としているから、もう少し自信をつける形で課題を提示しよう」
といったような、人間性を踏まえたアドバイスをすることができません。この点、心理面への配慮に関しては、人間の英語学習コーチに勝るものはありません。
私たちには感情があります。いつも良い気分で過ごせるわけではありませんし、「挫折しそうかも・・・」と落ち込むこともあります。
人間の英語学習コーチであれば、「この受講生は今、心理的にダウンしているな」と察して、課題を変えたり、励ましの言葉をかけたりと、柔軟に対応してくれるでしょう。
ですがAIは、データをもとにアドバイスを出すことはできても、私たちの心理という見えない要因を踏まえたサポートをすることはできないのです。
学習の孤独を防ぎ、モチベーションを維持する「人とのつながり」
AIにはAIの良さがあり、そして人には人の良さがあります。AIで英会話を学ぶことはもちろん可能です。しかし、人との英会話サービスには「コミュニケーション」という、本質的な価値が存在します。
そしてもう一つ、大切なのが「人とのつながり」。それは、英会話学習を長く続けるための心の支えとなります。
AIとの練習は手軽で便利です。けれど、英語を話せるようになるまでの道のりは長く、モチベーションを維持することが成功の鍵を握ります。人を介さない孤独な学習は、どうしても挫折につながりやすいものです。
週に一度でも、覚えた英語をオンライン英会話の講師に話してみる。グループレッスンに参加して、他の英語学習者と顔を合わせて交流する。そんな人との関わりがあるだけで、学習はぐっと前向きになります。
人との関係の中で感じる「楽しい」「通じた」「もっと話したい」という感情。それこそが、モチベーションを保ち、学びを継続する力になります。
こうした感情的なつながりは、AIとの学習では決して手に入らないものです。それは、英語を本当に話せるようになるための、何よりも強いエネルギー源なのです。
【まとめ】AI時代だからこそ「人と話す」英会話サービスが価値を持つ3つの理由
なぜ、AI時代の今、人と話す英会話サービスが価値を持つのか?その理由が次の3つです。
1. 言葉の裏にある「感情」や「意図」はAIには読めない
(=共感的コミュニケーションの重要性)
2. 予測不可能な会話に対応できる「柔軟性」が身につく
(=リアルな対話のトレーニング効果)
3. 学習を続けるための「人とのつながり」がモチベーションになる
(=心理的・社会的サポートの価値)
私たちは人間です。感情があり、時に不合理な存在です。だからこそ、コミュニケーションには柔軟性が求められます。それは、人との関わりを通じて、磨かれるものなのです。
最後に
AIは、英会話学習のための強力なツールです。
語彙力のチェック、簡単なアウトプット練習、「知識の確認」や「予定調和の練習」においては、これほど頼もしい存在はありません。
ですが、英語をコミュニケーションの道具として本当に使いこなせるようになるためには、人間だけが持つ「感情」「共感性」「柔軟な対応力」を磨く必要があります。
なぜなら、コミュニケーションは常に予測不可能だからです。どんなに準備をしても、相手の反応はいつも少しだけ想定外。そうした瞬間に対応できるようになるには、「リアルな人との会話」という経験が欠かせません。
AIはAIとして、その良いところを最大限に活用する。そして、英会話サービスという人と人とのコミュニケーションの場を通じて、生きた英語と、予測不能な状況にも対応できる柔軟なコミュニケーション力を育てていく。
「人と話す」ことは、当たり前のようでいて、実は英語を学ぶ上で最も大切なことなのです。
追記
言葉のニュアンスの違いを理解したり、相手の感情や目の前の状況に応じて柔軟に対応できる英語力を身につける。そのためには、AIを活用しつつ「人と英会話する」ことが重要です。
ポイントは、AIだけでは身につけられない「人とコミュニケーションする力」を、実際の会話を通して体感できることです。下記の記事では、そのためにおすすめのオンライン英会話サービスをランキング形式でご紹介しています。
英語を話し、ネイティブ講師から反応をもらう。この当たり前のやり取りの価値を、AI時代の今だからこそ実感してみてください。

