日本の英語教育は、中学・高校と文法を中心とした知識重視型の英語教育が中心です。
代表的なのが、文法、英単語を覚え、長文を読んで日本語に訳す、文法訳読法と呼ばれる教育法。
この方法は、もっとも古典的な外国語教授法で、英語以前、古くは明治以前に漢文の教授法として使われてきました。
文法訳読法は、文法のルールを徹底的にマスターし、言葉ではなく、文字を使って学習をする方法。単語を覚え、文法を覚え、英語の文章を日本語に置き換えて理解します。
日本の英語教育は、長らくこの訳読法が中心でしたが、2000年に入り、コミュニケーション重視の教育の影響で、英会話重視の英語教育が重視されつつあります。
とはいえ、実際の学校教育では、多少英会話の授業が加わりましたが、日本では文法や暗記中心の英語教育を否定できない環境があるのも事実です。
受験英語が悪者扱いされる原因
なぜ、日本の英語教育は、単語の暗記や英文法の習得など、知識重視の英語が重要なのか?
その理由の1つは、入試(受験)の関係です。
日本では、英語=受験という問題が切っても切れない問題です。それは、学校現場だけでなく、塾での英語教育を見れば一目瞭然。
現実的な問題として、高校や大学、試験に合格するには、英語科のテストで点を取る必要があります。そのためには、英単語を覚え、たくさんの文法知識を暗記する必要があります。
結果的に、コミュニケーション中心の英語教育より、単語力や文法力といった、知識重視の英語が重要視されているのが現状です。
話す力より、単語や文法。
この知識重視の英語教育のため、「何年勉強しても日本人は英語が話せない。その原因は文法中心の教育法だ!」という批判を受ける原因になっています。
特に、日本のいわゆる受験英語は、批判の矢面に立ちやすい存在です。
できる人は受験英語を頑張っている
確かに受験英語の場合、テストに出るパターンを徹底的に暗記して、「この問題はこう解く」というような、限定的で特殊な訓練が学習の中心になります。
テストで高得点を取るため(試験に合格する)ためには、英会話で使う機会の少ない、単語や文法を徹底的に覚える必要があります。
日本のいわゆる難関大の入試の一般受験の英語は、高いレベルの語彙力や英文法知識が不可欠。
コミュニカティブな勉強では、試験で点数が取れず、合格は難しくなります。
このような受験重視の学習法では、英語をすぐに話せることは難しいのも事実だと思います。
英単語を覚えること、文法を覚えることはとても単調で、忍耐が必要。しかも、「英語を話す」というより、「英語を覚える」という単調な作業が中心です。
そのため、外国語を学ぶという楽しみを感じることができない方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、「受験英語が役に立たない!」というのは言い過ぎで、受験のために勉強した英語の知識は、ムダになることは決してありません。
頭が空っぽな状態、何も学んでいない人が英語を話せるようになることはありません。
何事にも基礎があって、学ばずしていきなり英語がペラペラになる人は、よほどの天才以外いません。今英語ができる人も、しっかりとした努力をしてきたはずです。
受験英語=すべての基礎
日本人にとって、英単語や文法の知識は基礎。受験で英語を勉強して、自由に使えるようになるための土台を作っていくようなものです。
この意味で、受験英語は、退屈でつまらないものかもしれませんが、決してムダにはならないと思います。やっておけば、確実に英語を使えるスキルの基礎になります。
例えば、ビジネスシーンで取引先に英語でメールを書くとします。
この場合、文法がいい加減な文章しか書けない場合、取引先への信用に影響します。逆に、正しい文法で英文を書くことができるということは、教養があるという印象を与えます。
正しい文法で英語を書くことができるということは、しっかりとした学習の基礎があってこそ。また、英会話をするにも、ある程度英語のルールを理解しておく必要があります。
型どおりの文章暗記型コミュニケーションでは、いわば付け焼刃のようなもの。
暗記した台詞は使えますが、応用がききません。つまり、理解・継続的な学習なくして大きな成長は望めないのが現実です。
受験英語・コミュニケーションを両立する
日本語を例に考えて見ましょう。
しっかりとした文章・論文を書くためには、様々な読書をして、内容を理解する必要があります。言葉のニュアンスを使い分けて、適切な用法を用いなければ、良い文章を書くことができません。
また、話題が広い人(会話が上手い人)は、いろんなジャンルの情報を仕入れて、日夜コッソリ勉強しています。英語もこれと同じです。
受験英語=悪ではなく、勉強しだいで基礎的な学習の基盤に変えることが可能。
単語をしっかり暗記することで、様々なジャンルの英文読解が可能になり、TOEIC・TOEFL・英検対策になります。
また、文法をきちっちり覚えることで、ライティングの正確さが増します。これだけでも十分、受験英語を頑張る意味はあります。
決してムダなことではありません。
受験英語だけでは話せるようにはならないけれど
それに私自身、受験英語によって多大な恩恵を受けてきました。同時に、受験英語だけでは英語を話せるようにならないことも知っています。
やはり、英会話を上達するためには、学習と実践、両方が必要だと思います。受験英語というのは、英語を話せるようになるための前準備。
ここでしっかりと英単語や文法などの知識を脳にストックすること(インプット)で、後々必ず役に立ちます。もちろん、役に立たないと思うことは、それこそパスすればよいのです。
必要な英単語・文法事項・リーディングはきっちり学び、後は実践。英会話を上達するには、この方法が王道。
コミュニケーション中心、文法重視、どちらの学習もメリットとデメリットがあります。
大切なのはバランスです。どちらかに偏ることなく、中立的な立場に立ってみると、もっと自由に英語と向き合えるかもしれません。
まとめ
・受験英語は役に立たないは言い過ぎ。勉強する意味は十分にあります。
・受験英語はインプット。しっかりやっておけば、アウトプットで結果を出すことができます。
・特に中高で習う英語は土台となる部分。手を抜かずにきちんと自分のものにしておけば、英語を本気で頑張るとき、それが必ず役に立ちます。