A・努力する方向を考えてみる
定型文の暗記と実際のコミュニケーションに関するQ&Aです。結論から言うと、英語の例文を丸暗記することはムダではありません。
英会話では、決まりきったフレーズを覚えておくことで、簡単なコミュニケーションができるので、即効性を実感できます。この意味で、「一定の範囲」では、丸暗記も相応の効果が期待することができます。
ただし、丸暗記だけに頼って正しい(ここでは効果があるという意味です)方法で取り組まないと、将来的にはプラスよりマイナスの効果のほうを実感してしまう可能性もあります。
そこで、まず定型文を丸暗記した失敗例を、私の体験からご紹介させていただきます。
覚えても役に立たない?
昔、ある人に「基本英文700選」(駿台の受験本)を薦められ、1日3つの例文を暗記していた時期があります。
約360くらい覚えるまで頑張ることができましたが、その努力は英会話に役に立ったかというと、ハッキリ言って全く役に立ちませんでした。
投資した努力と時間にも関わらず、今では残念ながら、全部忘れてしまいました。その理由は次の2つです。
・日常コミュニケーション上、実用性のない英文を暗記していたから
「700選」はあくまで受験英語で点を取るための書物です。収録されている例文を暗記することは、大学受験の英語対策にとても役立ちます。
・なぜわざわざ覚えるのか、その理由があいまいだったから
私の場合、人に薦められるがままに、闇雲に暗記に走り時間をムダにしましたが、結果的に分かったのは次のことです。
生きた場面の中で
英語の定型文や例文を暗記する上で、一番効果が大きい方法は、実際の英会話をイメージして暗記を方法です。
「この場面ではこの英語を話そう!」という、具体的なイメージをともなうスタイルです。
例えば、あなたは来月イギリスに旅行に行きます。ツアーではなく、個人旅行です。あなたは、カンタベリーやウェールズなどの観光地を訪れたいと考えているとします。
そこで、旅行を楽しむために、英会話の例文集を暗記するとします。この場合、どんな場面で英語を使う必要があるでしょうか?
・機内(飲み物や食事をお願いするとき)
・税関や入国審査(必ずWhat’s the purpose of your visit ? と聞かれます)
・お店(欲しいものを買うとき)
・切符売り場(電車、バスetc・・・)
・レストラン(食事は楽しみでもあり、難しい場面でもあります)
・ホテル(空き室の確認、部屋のタイプなど)
いろいろな場面が浮かぶと思います。この状態になってこそ、例文の丸暗記は意味のある学習になります。
そこには、「私はこのシーンで、こういう英語を話したい!」という具体性が湧くからです。この場合、英会話の定型文を丸暗記したとしても、それほどデメリットはありません。
なぜ、この方法が効果的かというと、留学やホームステイをイメージすれば分かりやすいかもしれません。
現地でネイティブの人とコミュニケーションすると、同じようなパターンから英会話が始まります。
What’s up?
Hello!
など、周りの様子を観察していれば、「この場面でこんな英語が使われている」という現場を目撃します。そこで、「自分も人とあいさつするときはこの英語を使えばいい」というようになります。
そして、周囲の会話を聞き、それを真似し、覚えていくことで、少しずつ、現地で使える英語のコミュニケーション力が身についていくというわけです。
具体的な場面をイメージしながら英語の例文を暗記する方法は、このようなプロセスを自分で行うことです。
「ホテルではこのフレーズ、空港ではこの例文」というように、場面を意識して英語を暗記することで、暗記したフレーズが使えるようになっていきます。
根性論的な暗記は危険
問題なのは、それを覚える目的も意味を感じず、根性論で例文をひたすら頭に詰め込んでいく方法です。
先に書いたとおり、英会話の定型文を暗記することは、ムダではありませんが、闇雲に覚えても、苦痛を感じるリスクの方が高くなります。
人は理由のない行動を続けることを苦痛に感じる生き物なのです。
たとえ「英語の例文を暗記することは大切だ」と頭で分かっていても、「なぜその英文を覚えるのか?」について、自分なりの理由がないと、学習の効率が上がることはありません。
暗記の効率がダウンし、悪い場合は英文法の知識を無視(もしくは軽視)した結果、間違った英語の知識を持ってしまうリスクがあります。
大切なのは
もしあなたが例文を暗記し、それを英会話に役立てたいと考えられている場合は、無味乾燥な丸暗記を避けることが大切です。
そして、実際にあなたが英語を使う可能性の高い場面を想定することをオススメします。
あなたがビジネスマンなら、商談での英語やあいさつやあいづちの方法などの場面の例文にトライするとよいかもしれません。
もしあなたが大学生で、ゼミで英語の討論がある場合は、ディベートの例文を暗記。
自分がどのように発言したいかをシュミレートすることで、実際の場面でも、スムーズに討論に参加できるようになります。
英会話の初心者の方なら、自己紹介やあなたが好きなことに関連する、シンプルな例文を中心に暗記がオススメです。
大量の英文を覚える必要はありません。よく使うものだけ(俗に言う重要表現)を覚えるだけでも、かなり力になります。
ポイントは、あなたが英語を話す場面を意識して例文を暗記していく学習です。それを意識し、自分で口に出し、繰り返しスピーキングして、自分のモノにしていきましょう。
まとめ
長くなってしまったのでまとめます。
「英語のフレーズを丸暗記する」と言っても、必ずしもそれが悪いこととは言えません。
1・それを覚える理由がある
2・それを使う具体的なイメージを持つことができる
という場合、必要に応じてフレーズを丸暗記することで、「効果」を実感することができるでしょう。つまり大切なのは、「何のために」それを丸暗記するのか?動機が大切です。
最後に
以上、英会話のために例文や構文を丸暗記する意味はあるのか?体験をもとにお伝えしました。
基本的に根性論で英語を詰め込んでいく方法をおすすめはしませんが、海外渡航やビジネスなど、「必要最低限英語で言いたいことを言う必要がある」状況においては、それは効果が実感できる方法の一つになります。
基本はベーシックな勉強を中心に、着実に知識を積み重ね、インプット→アウトプットという過程を経ることが大切です。
反面、「この場面でこのようなことを英語で話したい!」というときは、暗記の力に頼るのもありです。使う場面をイメージして、必要なフレーズをストックしていきましょう。
参考になれば幸いです。